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弱輩クライマーの宮崎です。
7月26~28日の3日間で、剱岳・チンネ左稜線に行ってきました。
メンバーは50代上手、30代宮崎、20代早戸の3人。
当初は八ツ峰クレオパトラニードル登攀を含めた4日間の予定でしたが、悪天候のため1日早く下山しました。

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はじめに、ムキムキでパチパチでハスキーボイスな早戸くんは最近、「wakagashira(若頭)」と呼ばれています。会員にニックネームを付けることが運営委員の仕事だと勘違いしている日置さんによって名付けられました。
そんなwakagashiraが、今回の山行の主役です。


往路はいつものように上手車に乗せてもらって2人で立山駅まで。その車中、こんな会話がありました。

宮「計画書作っていて、気付いたことがあるんですよ」
上「なんですか?」
宮「チンネ行く27日が若頭の誕生日なんですよ」
上「それは、何かしてあげないとですね」
宮「じゃあ、コンビニでケーキでも買っていって、サプライズで祝いますか」
上「そうしましょう」

そんな会話が行われているとも知らず、上手車を颯爽と抜いていく早戸車。
コンビニで買い出しをして、立山駅で合流。ケーブルカーと高原バスを乗り継いで、室堂に到着。
ザックの重量を量ると、それぞれ21~23kgほどあります。
なぜそんなに重いのか。それは、3泊分の酒をかついでいるからです。
特に若頭はシュラフを持ってこないという大胆な軽量化に踏み切ってまで、缶ビール6本を持参。さらに千種の新テントをかつぐ上手さんの分の4本を引き取り、ビールだけで3.5kgを収容しました。
ちなみに宮崎はビール2本、焼酎ペットボトル500ml、さらに米6合、パスタ、カレーなど、大量の食料
で75リットルザックをパンパンに。

201307261044332.jpg 剱沢に下る道。初日は山頂まで見えた


みんな若干引きながらも「帰りは飲み食いして軽くなるから」と言い合い、8時40分に室堂を出発。
初日とあって快調なペースで11時には剱沢小屋に到着。
しかし長治郎谷の長い長ーい雪渓には大苦戦します。
しんどい思いをした後にビールが飲みたくなるから一生懸命持ち上げているのに、そのビールのせいでしんどい。
いったいビールとはなんなのか…!?
登山に常につきまとうこの葛藤に頭を悶々させながら下っていると、前方にいた若頭が道の途中でおもむろにビールを1缶取り出しプシュ。
「ザックのなかでビールが漏れてたんですよ」などと苦しい言い訳をしながら、うまそうに飲み干します。
そんな解決策があったのか…!
やはりwakagashiraと言われるだけのものを彼は持っています。

201307261208501.jpg 平蔵谷出合を通過

2013072612426.jpg 長治郎谷。登っても登っても近づかない熊の岩


そんなこんなで14時ごろに幕営予定地の熊の岩に到着。
まずは乾杯!
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そしてこの山行に間に合うように西村代表にわがまま言って購入してもらった千種の新テントを設営!
快適なテントのなかで、持ってきたビールは後先考えずに減っていくのでした。
20130726151909.jpg バックには八ツ峰。水場までは悪い草付き斜面を下る



翌日は2時起床。まったりと朝ご飯を食べ、クライミングの準備をしてまだ暗い4時に熊の岩を出発。
長治郎谷右俣を詰め上げ、4時40分に池ノ谷ガリーに到着。
暗いなかで悪名高いガレ場を下るのは危険なので、20分ほど待機。
畏怖を感じるほどの山の深さと威容。これが剱岳北方稜線かー。と初めてきた宮崎はしみじみ。
剱岳3回目の早戸くんは余裕の一服。さすがwakagashira。

20130727050012.jpg 池ノ谷ガリーを下る若頭


底の見えない谷に向かって「ラーック!」のコールを連発しながら慎重に下り、5時20分ごろに三ノ窓に到着。
日本にある貴重な氷河のひとつ、三ノ窓雪渓を見下ろし、左手はこれまた氷河の小窓雪渓と池ノ平、右手は空に突き上げるチンネのシルエット。その奥には八ツ峰。うーん、素晴らしいロケーション。これはテンション上がる!
微妙に小雨が降ったり止んだりしているのが気になりますが、雲は流れ空は明るいので登攀決行を決定。
雪渓を左稜線の取り付きまでトラバースし、6時にクライミング開始。

20130727052706.jpg チンネ左稜線取り付き付近


1p Ⅲ級 リード上手 凹角からテラスまでの15m。岩が濡れているので慎重にスタート。 
20130727062228.jpg 慎重に登る上手さん

2p Ⅳ級 リード早戸 2つ目のバンドまでフェース40m。ロープの引っかかりにやや苦戦。
20130727074746.jpg 氷河をバックにフォローする上手さん

3p Ⅲ級 リード宮崎 フェースからバンドに出てピナクル上までの50mだったが、どう考えてもロープの流れが悪くなるので、ピナクルの側壁25mくらいでピッチを切る。

4p Ⅲ+級 リード上手 ピナクル裏のフェースを登り、草付きまで45m。余裕。

5p Ⅰ級 リード上手 草付きのリッジを歩いて登る40m。

201307270908331.jpg 快適な岩壁。後ろはクレオパトラニードル

6p Ⅱ級 リード早戸 ハイマツ混じりのフェースをノープロテクションでガンガン進む。

7p Ⅲ級 リード早戸 勢いに乗ってここもほぼノープロテクション。さすがwakagashira…!

20130727102824.jpg 左稜線下部、下からガスが出てきた


8p Ⅳ級 リード早戸 ようやく手応えの出てきたピッチ。翌日登る予定だったクレオパトラニードルを横目に、尖ったピナクルを正面から越える。
20130727104014.jpg リードするwakagashira


9p Ⅴ級 リード宮崎 左稜線の核心、小ハング越えの35m。初めてのⅤ級リードだったが、プロテクション多めにとって、じっくり時間をかけてクリア。

10p Ⅲ+級 リード宮崎 ホールドのたくさんあるクラックとフェースを20m。このあたりでポツポツ雨が降り始め、遠雷響く。かなり嫌な予感漂う。

11p Ⅲ+級 リード宮崎 本格的な雨になり、風も強まる。近くで落雷。…落雷!?マジで!?
さっきのⅤ級より断然怖い雷雨登攀。
逃げ場のないナイフリッジの上で金属も持っている。
懸垂でエスケープできるポイントは過ぎている。
文字通り運を天に任せて進むしかない…!

12p Ⅲ級 リード早戸 最もスピードのある若頭にリード交代。ゴロゴロドカーン!と鳴るたびに、身をかがめることしかできない。ほとんどノープロテクションで登る。

13p Ⅱ級 リード早戸 果てしなく長く感じた3ピッチを終え、チンネの頭に到着。登攀終了の喜びを分かち合う余裕なく、懸垂地点までクライムダウン。池ノ谷ガリーを見下ろすコルから懸垂下降してガリーまで。

ここでようやく稜線を外れて一安心。雷雲は過ぎたようだが、嵐は止む気配なし。
とにかく生命の危機は脱した。正直、今までの人生で最も死に近づいた数十分間。
上手さんも「これは死んでもしょうがないと思った」と後に述懐。
そんななかで早戸くんは「いやー、なんだかんだ僕には落ちない自信がありました」ですと!
さすがwakagashira…!

池ノ谷ガリーを駆け上がり、長治郎谷を駆け下り、転がり込むようにテントへ。
ハーネスを着けて登攀を続けなければならなかったためレインパンツをはけず、下半身はずぶ濡れ。
レインジャケットを着ていた上半身もなぜかびしょ濡れ。
クライミングギアもロープもたっぷり水分を吸って、乾くあてもない。
焼酎お湯割りで体を温めながらの作戦会議で、翌日のクレオパトラニードルはあきらめ下山を決定。
となれば、燃料も酒も空にして軽量化しないと!ということで宴会開始。

6月の奥穂南稜よりは辛さを控えめにしたポークビンダルーを食べ、ようやく3人とも気持ちもお腹も落ち着いたころ、「いやー、実は今日誕生日なんですよねー。最悪の誕生日っすわー」と苦笑いする早戸くん。
今だ、このタイミングしかない!
ちょっと忘れかけていたケーキがここで登場!
マッチをろうそく代わりにして、吹き消してもらう。
無理矢理テンション上げ気味に、「ハッピーバースデー!!」

…が、コイツ、あからさまにめんどいオーラ出しやがった!
「誕生日は女の子といちゃいちゃしたいっす」だと…!
こんなところまでケーキを持ってきたのに、しかも年長者2人に祝ってもらっているのにこの態度。
さすがwakagashira…!
20130727174217.jpg めんどくさそうな顔で火を吹き消すwakagashira



3日目、誰彼ともなく3時ごろ起床。雨は止んでいるが、今日は明るくなるまで行動するつもりはない。
ということで、朝食を取って、みんなで2度寝。
起きたのは7時過ぎ。残りの燃料を使い切るまで靴を乾かし、撤収準備を整え9時過ぎに出発。
10時過ぎに長治郎の頭で休憩し、11時前に剱岳山頂にいきなり出た。
人がたくさんいる。先に着いているはずの若頭はどこかなーと
「わかがしら~!」と呼ぶと、わいわいしていた山頂がいきなりシーン…
無関係の一般登山者を一瞬凍らせてしまったではないか。日置太郎め、危険なニックネームをつけやがって!

201307281109321.jpg 真っ白だった剣岳山頂


山頂は雲に包まれて真っ白。なのでそそくさと記念撮影を済ませ、下山開始。
下山中はまたしても強烈な風雨に襲われ、岩稜帯に沢が続出。靴が滑るため慎重なクライムダウンになり、想定タイムを30分オーバーして13時半ごろ剱沢小屋に到着。若頭は20分は待っていたという。
剱沢小屋から室堂まではコースタイム3時間20分のところを、早戸くんはなんと2時間で踏破。
山行3日目、天候悪いなか、20kg担いでるとは思えないスピードで動き続けるアスリートクライマー。
一時は体脂肪率がインテル長友並みの5%だったそう。すごいぜwakagashira…!




帰りは「グランドサンピア立山」で優雅に温泉につかり、生還したら行こうと決めていた「廻る富山湾 すし玉」で海の幸を堪能。
1日早い帰宅となったものの、いろいろな意味でこれまでで最も印象深い山行となりました。
2人には大変お世話になり、ありがとうございました。
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